Shiki’s Weblog

みじかい文の連続で文章をかかないといけない理由

2018/06/12

短い文を心がければ悪文の七、八割は退治することができる。短い文の上限は句読点込みで五〇字から六〇字である。 ― 『日本語作文術』, 野内良三, 中公新書2056, 2010.

はじめに

 梅棹忠夫さんの文章の「一文の平均はおよそ四〇字前後」(『ウメサオタダオが語る、梅棹忠夫』, p86)といわれている。梅棹さんの文章はわかりやすい。そのかきかたをみならう努力をするべきだ。そう主張しているひともいる。その一方で、梅棹さんの文章は、よみやすいけれど、ぜったいにまねできない。そう主張しているひともいる。
 いま、平均文長40字以下という文章が、毎日、つくられているウェブサイトがある。外国人や、小中学生のために、「やさしい日本語」で記事がかかれている「やさしい日本語で書いたニュース」のサイトだ。
 先月、「やさしい日本語ニュースの制作支援システム」という論文が公開された。
 「やさしい日本語で書いたニュース」は、ふつうの日本語でかかれたニュース記事をかきかえたものだ。「やさしい日本語」へのかきかえは、外国人に日本語をおしえる日本語教師と、記者とでおこなっている。ひとつの記事のかきかえに、およそ2時間かかるのだという。ひとつの文のながさは、50文字程度以下にすることを目標にしている。つまり、すべての文を短文でかくことが目標とされている。
 それでも、「やさしい日本語で書いたニュース」の記事には、50字をこえる、ながい文がのこっている。そうした長文は、短文になおしにくい文だったのではないか。はやくつたえなければ、ニュースではなくなってしまう。かんぜんにかきなおすには、時間がたりないときもあったにちがいない。
 本稿では、「やさしい日本語で書いたニュース」からとりだした、16個の長文をしらべてみる。長文は、「重文」、「~たり~たり」、「複文」、「語彙・用語」、「ニュースの内容がちがってしまっている文」と、5つのグループに分類してある。
 また、わたしが短文でかきなおした文章を、それぞれの長文にそえている。日本語の表記は、先月紹介した「わたしの日本語表記のルール 2018 v2」にしたがって、かきあらためている。むずかしい漢語はさけているが、「やさしい日本語」の語彙制限は、それほど意識していない。時間がじゅうぶんにあれば、日本語教師や記者のひとたちは、もっとうまくかきなおせるとおもう。ひとつの答案。それくらいにみてほしい。

重文

 重文は文をわけてもだいじょうぶ。作文の仕かたの本には、そう、よくかかれている。短文にするときは、テンをマルにして文末をなおす。

例文1

中国人の登山家の夏伯渝さんは69歳で、けがで両方の足をなくしたため、人工の足の「義足」を使っています。
51字, CCAA,「両方の足が義足の69歳の中国人がエベレストに登る」.

 CCAAというのは、「文体診断ロゴーン」の評価。順に、文章のよみやすさ、文章のかたさ、文章の表現力、文章の個性の評価になっている。短文でかきかえるときは、文体診断ロゴーンでの評価がAEAAとなることを目標にした。
 例文は、句読点をはぶくと、意味があいまいなになってしまう。句読点をずらすと、つぎのように、よむこともできる。

中国人の登山家の夏伯渝さんは、69歳でけがで両方の足をなくしたため、人工の足の「義足」を使っています。

 夏さんは、いま69才なのか、69才のときにけがをしたのか?あいまいさのない、がんじょうな文になっていない。記事のタイトルから、夏さんはいま69才だということがわかる。

短文:
中国人の登山家の夏伯渝さんは、69才です。けがで両方の足をなくしたため、人工の足の「義足」をつかっています。
21字+33字, ABAA.

 ふたつめの短文のはじめに、「夏さんは」とつける必要はない。助詞の「は」は文をとびこす(『日本語作文術』, p74)。ひとつめの文の「夏伯渝さんは、」が、ふたつめの文にもきいている。

例文2

ポーラ美術館が高い技術のスキャナーを使って4月から「海辺の母子像」を調べると、この絵の下に新聞が貼ってあることがわかりました。
63字, EDAA,「ピカソ 同じキャンバスに3回絵をかいた」.

 この例文も、かんたんに短文の連続にかきかえられる。

短文:
あたらしいスキャナーをつかって、「海辺の母子像」を、ポーラ美術館が4月からしらべました。この絵のしたに、新聞がはってあることがわかりました。
44+26字, AEAA.

 例文の「高い技術の」は日本語として違和感があった。ふつうのニュースでは、「最先端の」となっていた。ここでは「あたらしい」になおした。
 じつは、ふつうのニュースでは、あとから説明がおぎなわれていた。スキャナーでつかわれている技術は、火星探査などにもつかわれているそうだ。「高い技術の」では、そういったことはつたわってこない。
 語順も、ながい補足部がさきにくるようになおした。

例文3

日本気象協会がおととし外国人にアンケートを行うと、吐き気やめまいなどがして熱中症のようになったことがあると答えた人は、75%でした。
66字, EEAA, 「「熱中症に気をつけて」 外国人に英語のチラシを配る

 例文は、ていねいによまないと、「アンケートをしていたら、めまいがした」のように誤読してしまう。さいごまでよみとおさないと、意味がつかめない。日本語にはそういうところがあるとしても、長文ではさけたい。

短文:
日本気象協会は、おととし外国人にアンケートをしました。はきけや、めまいなどがして熱中症のようになったことがあると、75%のひとがこたえました。
27字+44字, AEAA.

 ふたつめの文は、動詞中心文(『日本語作文術』, p88)にかきかえた。

~たり~たり

 いくつもの単文を、「~たり、~たり」でつなげて重文にしていくと、いくらでもながい長文をつくれてしまう。このパターンはよくみられた。
 また、「~たり」には、意外性とか可能性とかをつたえる意味あいもある。長文で、そうした意味あいまでふくめると、とてもわかりにくい文になってしまう。

参考:「会話で「単独使用」される「たり」 ――なぜ「たり」で「可能性」や「意外性」が表せるのか――」, 山内美穂, 日本語教育, 162巻, 2015.

例文4

この会社は少しでも早く学生と会うために、仕事を体験するインターンシップを多くしたり、学生に早く書類を出してもらったりしました。
63字, EAAA, 「来年の春に就職する大学生の面接が始まる

 ただの並列の「~たり~たり」は、文をわけて、「たり」をけずる。それくらいで短文になおせる。

短文:
この会社は、すこしでもはやく学生とあうために、仕事を体験するインターンシップをおおくしました。また、学生に書類をはやくだしてもらいました。
47+22字, AEAA.

 ふたつめの文の主題も、「この会社は、」が支配している。これは、例文1をなおしたときとおなじ。

例文5

AIが入ったカメラは店の中をずっとチェックしています。そして、周りを何度も見ながら歩いたり、カメラや店員から見えない場所に行こうとしたりする人を見つけると、店員のスマートフォンに知らせます。
27+68字, CAAA, 「AIが入ったカメラで店の品物を盗まれないようにする」.

 ふたつめの文は、がんじょうな文になっていない。「周りを何度も見ながら」の主語はAIカメラなのか人なのか。耳できくと、よくわからない。

短文:
AIがはいったカメラは、店のなかをずっとチェックしています。ぬすみをしようとするひとは、ほかのひととちがうふるまいをします。なんども、まわりをみながらあるいたり、カメラや店員からみえないところにいったりします。カメラのAIは、そういうひとをみつけると、店員のスマートフォンにしらせます。
30+32+43+38字, AEAA.

 カメラがさがしているのはどういう人なのか。ひとつめの文で説明をおぎなった。「場所」は湯桶よみなので、「ところ」になおした。「~たり~たり」も短文のなかであれば、よみやすい。

例文6

新しい規則では、近くにある銀行の店を交代で休みにしたり、1人が2つの店で働いたりすることができるようになります。
56字, DEAA,「銀行が平日に休んでもいいように規則を変える」.

 このニュースのポイントは、なんとかして銀行の数をへらさないようにしたい、ということだ。けれども、例文は意外な感じをつたえたいようにもよめる。会話だとしたら、つぎのような場面がうかんでくる。

「新しい規則だと、近くにある銀行の店を交代で休みにしたりできるんだって。」
「え~。べつの銀行にいかないといけない日がでてくるんだ。いやだなぁ。」
「1人が2つの店で働いたりすることもできるようになるんだって。」
「ほんとうに?行員さんは、半分になってしまうってこと?」

 短文にわけて、「たり」をとれば、より客観的にかける。

短文:
あたらしい規則では、銀行の店は、そのちかくの店と、交代でやすみになることがあります。また、おなじひとが、ふたつの店で、はたらいていることもあります。
42+32字, AEAA.

 例文は目線が銀行側からだった。短文では、利用者からの目線にかえた。また、「近くにある銀行の店」を「わたしの家の近くの店」とよみちがえないように、かきかえた。

例文7

マンホールから水があふれたり、低い場所に水がたまって地下鉄の駅や地下街に水が入ってきたりして、危険です。
52字, CCAA, 「雨がたくさん降っているときに気をつけること」.

 例文は、前後の文章をよむと、「マンホールから水があふれてくることがあります。低い場所に水がたまって地下鉄の駅や地下街に水が入ってくるもあります。危険です。」という意味でかかれているとおもわれる。「マンホールから水があふれてきます。また、低い場所に水がたまって地下鉄の駅や地下街に水が入ってきます。危険です。」ではなさそうだ。
 つまり、この文の「~たり」は、可能性の意味あいをふくんでいるようにみえる。並列の意味での「たり」とかねると、文の内容が複雑になったときには、誤読の原因になりそうだ。

短文:
マンホールから、水があふれたりして危険です。地下鉄の駅や地下街に、水がながれこんでくることもあります。
22+29字, AEAA.

 まえの例文とちがって、短文にするとき「たり」をとってしまうと、文の意味がかわってしまう。文の後半の「低い場所……」は、「地下鉄の駅や地下街」との関係がはっきりしないので、けずった。「はいる」は「ながれこむ」にかえた。やさしい和語はうまくつかいたい。

複文

みんなむつかしい文章かくよな。単文の連続でかかんと。 ― 梅棹忠夫
梅棹忠夫 語る』, 聞き手 小山 修三, 日本経済新聞出版社, 2010.

 梅棹忠夫さんは、民族学博物館館長をされていたときに、「複文はイカン」ときびしく指導をされていたことが、つたえられている(『梅棹忠夫 語る』, p.43)。「やさしい日本語」でも、複文があらわれると、いっきによむのがむずかしくなる。
 長文の複文は、単文の連続にわけて、短文にかきなおす。文と文の接続の仕かたは、かんがえないといけない。短文になおすには、文と文の論理的な関係がわかっていないいけない。

例文8

来年からは、会社が作る車の中で、決まった割合以上を電気自動車などにしなければならないという新しい規則がスタートする予定です。
62字, EBAA,「中国の北京でモーターショー たくさんの電気自動車を紹介」.

 例文は、あたらしい規則がはじまることと、規則の内容を、ひとつの文にまとめている。それで、文がながくなっている。

短文:
予定では、来年から、車をつくる会社は、あたらしい規則をまもっていくことになっています。あたらしい規則では、きまった割合以上の車を電気自動車などにしないといけません。
43+39字, AEAA.

 例文の「スタートする」という表現は、積極的につかう理由はないようなので、かきかえた。

参考: 「やさしい日本語」で表現するカタカナ外来語・アルファベット単位記号用語辞典(カテゴリーⅠ対応)」, 弘前大学人文学部 社会言語学研究室.

例文9

この技術は、話したり手や足を自由に動かしたりできないタニア・フィンレイスンさんが夫と一緒に考えて作った入力のシステムを使っています。
66字, EDAA,「グーグル モールス信号でスマートフォンに言葉を入力する

 例文は文脈がいりこみすぎている。こういうときは、単文をぬきだして、箇条がきにする。それから、論理的な関係をみなおす。

 これだけの内容をひとつの文にまとめてしまうと、とてもよみにくくなる。

短文:
タニア・フィンレイスンさんが、夫といっしょに、あたらしい入力のシステムをかんがえてつくりました。この技術は、そのシステムをつかっています。タニアさんは、話をしたり、手や足を自由にうごかしたりすることができません。
48+21+37字, AEAA.

 「自由」は、ほんとうはかなでもよいとおもう。梅棹忠夫さんのつかわれていた表記にあわせて、すこし妥協した。ひとつめの文の「あたらしい」は、あらたにおぎなった。「話したり」は、「放したり」とききまちがえないように、「話をしたり」にかきかえた。

例文10

団体によると、夫婦で働いている家庭や1人で住んでいる人が増えて、料理しなくてもいい弁当などを買う人が増えているためです。
60字, EDAA,「コンビニなどで弁当やおかずが去年10兆円以上売れる

 例文は、文の論理が飛躍していて、理解するのがむずかしい。単文にきりだしてみる。

1) 団体は、こういっている。
2) 夫婦で働いている家庭や1人で住んでいる人が増えた。
3) 弁当などは料理しなくてもいい。
4) 弁当などを買う人が増えている。
5) そのためだ。

 2と4が、3でどうつながるといいたいのか、このままだと、論理がよくわからない。いいたいことは、つぎの3'のようなことだろう。

3') 弁当などは料理しなくてもいいので、夫婦で働いている家庭や1人で住んでいる人がよくかう。

こうなおすと、「3'なので、2だと、4になる」という論理でかける。

短文:
団体は、「ともかせぎのひとや、ひとりでくらしているひとが、ふえました。そういうひとたちは、料理をしなくてもいいように、おべんとうなどを、よく買います。それで、おべんとうなどがよくうれました」といっています。
5+(30+40+19)+9字, AEAA.

4と5は、「それで、おべんとうなどがよくうれました」とまとめなおした。「料理をしなくてもいい」のが理由なのかどうか、わたしにはよくわからない。さいごに「といっています。」ときちんとかいて、そこはにげておく。

語彙・用語

 「やさしい日本語」でつかえる語彙は、ある程度制限されている。文中では、やさしいことばにおきかえたりすることもおおい。それが長文につながっていることがある。

例文11

AIスピーカーは、自分で考えるコンピューターのAIを使って人と話をして、インターネットで情報を調べたり、テレビをつけたりすることができます。
70字, DAAA, 「AIスピーカーが命令されたと間違えて会話を録音して送る 」.

 例文はAIという用語をひとつの文のなかで説明しようとしている。そのため、ふつうの日本語としても、よくわからない文になってしまっている。

短文:
AIスピーカーは、「AI」をつかって人と話をします。AIは、じぶんでかんがえることができるコンピューターです。ことばを理解して、インターネットで情報をしらべたり、テレビをつけたりすることができます。
26+29+44字, AEAA.

 あたらしい用語は、文をわけて、「AIは、~です」のように説明すると短文にしやすい。さいごの短文は「ことばを理解して、」とさらに説明をおぎなった。

例文12

気象庁は、硫黄山から2kmぐらいの所までは、大きな石が飛んできたり、熱い灰などが流れてくるかもしれないため、気をつけるように言っています。
69字, CDAA, 「宮崎県にある硫黄山で2回目の噴火

 このときの気象庁からの発表には、「硫黄山から概ね2kmの範囲では、噴火に伴う弾道を描いて飛散する大きな噴石及び火砕流に警戒してください。」とかかれている。例文の「熱い灰など」は「火砕流」のことだろう。「熱い灰」では、危険性がいまひとつ、つたわってこない。

短文:
気象庁は、硫黄山から2kmぐらいのところまでは、気をつけるようにいっています。その範囲内のところには、おおきな石がとんでくるかもしれません。また、数百度にもなった灰などが、なだれこんでくるかもしれません。
39+31+32字, AEAA.

 短文では、「数百度にもなった灰など」とかきかえてみた。外岡秀俊さんの『おとなの作文教室』には、「形容詞をデータに置き換える」というコツがでてくる。
 火山のちかくでくらしているひとたちは、「火砕流」ということばをしっておくべきだ。そうかんがえる人も、あるだろう。そのように、かきなおすこともできる。

短文:
気象庁は、硫黄山から2kmぐらいのところまでは、気をつけるようにいっています。その範囲内のところには、おおきな石がとんでくるかもしれません。また、「火砕流」がおきるかもしれません。火砕流とは、数百度にもなった灰などがなだれこんでくることで、たいへん危険です。
39+31+20+39字, AEAA.

 文はそれほどむずかしくならない。なお、火砕流について、科学的なことは専門のひとに確認してほしい。

: 日本語は形容詞にとぼしい。そのことを柳田国男さんは昭和13年(1938年)に「形容詞飢饉」とかかれている。それをおぎなうために、漢語にナをつけてつくったナ形容詞(形容動詞)が、1917-1925年のあいだに、たくさんつくられた。そのことを、永澤済さんの研究があきらかにしている。柳田国男さんは、「漢語の無差別なる採用であつてはならない」と警鐘をならしていた(『国語の将来』, p.275)。梅棹忠夫さんは、和語にとけこんだナ形容詞を、かながきするようにしている。

ニュースの内容がちがってしまっている文

 できるかぎり、はやく事実をつたえる。ニュースのやくわりのひとつだろう。けれども、ふつうのニュースでかかれている内容を、きちんとつたえていない記事がいくつかあった。

例文13

去年6月からインターネットの広告についての法律が厳しくなって、病院や診療所のウェブサイトをチェックすることになりました。
60字, ECAA, 「病院のインターネットの広告 160件が法律に違反していた

 ふつうのニュースには、医療法が改正されて、ホームページが広告規制にくわえられたことがかかれていた。きびしくなった法律は、広告の法律ではなくて医療法。重文のテンのあとの主語は、法律ではなくて、行政府の厚生労働省。例文は、説明のたりないところがおおい。

短文:
病院や診療所がだすインターネットの広告に、うそがあるとこまります。そのため、病院などがまもらないといけない法律が、去年6月からきびしくなりました。病院などのウェブサイトも、厚生労働省がしらべることになりました。
33+40+32字, AEAA.

 ふつうのニュースでは、法律改正の背景まで、ていねいに説明していた。記事はよりわかりやすいものだった。短文でも、背景までふくめて説明するようにした。

例文14

15日から新しい法律が始まって、ホテルではない家やマンションでも、お金をもらって客を泊める「民泊」ができるようになります。
61字, ECAA,「外国人に人気がある日本の古い家を「民泊」で利用する」.

 民泊は、すでにあるのでは?この記事をよんで、そうおもったひともいたのではないだろうか。ふつうのニュースには、つぎのようにかかれていた。

今月15日に施行される「民泊新法」は、自治体に届け出をすれば原則、誰でも空き部屋を活用して民泊を営業できるようになります。

 新法では、民泊は届出制になる。そういうニュースだった。

短文:
「民泊」をいとなむための法律が、15日からあたらしくなります。民泊は、家やマンションのあいている部屋に、お金をもらって客をとめるサービスのことです。あたらしい法律では、役所にとどければ、だれでも民泊をいとなめるようになります。
31+43+39字, AEAA.

 法律があたらしくなること、あたらしくなった点、それぞれを短文にきりわけて、かきあらためた。「民泊」という用語の説明も、べつの文にわけた。

例文15

このため、去年の3月に法律が変わりました。車を運転する75歳以上のお年寄りは、3年に1回車の免許を更新するときに、脳に問題がないか調べるテストを受けることになりました。
21+63字, BDAA,「車を運転する75歳以上の5万人以上が「認知症の可能性」

 ふつうのニュースをよむと、例文の説明はまちがっていることがわかる。認知機能のテストは、運転免許証のかきかえのときに、以前からおこなわれていた。法律がかわったのは、そこではない。テストで認知症のおそれがみつかったひと全員に、医師の診断を義務づけたりした。そこが法律のかわった点だ。そのことが、かかれていない。そのため、記事のあとの文章で、医者がでてくる理由がわからなくなってしまっている。

短文:
「認知症」のような脳の病気が原因のひとつです。そのため、車をはしらせたい75才以上のおとしよりは、脳の病気をしらべるテストをうけています。テストは、3年に1回、車の免許をかきかえるときにおこなわれています。去年の3月には、法律がさらにかわりました。認知症のおそれがあるようであれば、かならず医者にみてもらうことになりました。
23+46+34+21+38字, AEAA

 短文では、運転→はしらせる、更新→かきかえる、のように、ことばもえらびなおした。免許はふだんから、「かきかえ」と、よくいっていないだろうか。例文の「1回車」は、テンがないと複合名詞のようにもみえてしまうので、あらためた。

参考: 「3月12日スタート、改正道路交通法の主なポイント(その2)運転免許を持つ75歳以上の方へ。認知機能の状況に応じ診断や講習の機会が増えます。

例文16

29日、アメリカの8000以上の店を4時間閉めて、店で働いている約17万5000人に研修をしました。
50字, CEAA, 「アメリカのスターバックス 人種差別がないように店員に研修」.

 人種差別をなくすように研修をした、という記事だ。この文は、文字数としては長文とはいえない。けれども、人種差別をなくすという目的のために、どんな研修をしたのだろう?そのことが、この記事には、かかれていない。
 この研修は、"racial bias training"とよばれている。意識していなくても、人種についての偏見やおもいこみは、だれにでもある。そういうことから、まなんでいこう。そういった研修だったことが、海外のニュースなどではつたえられている。

短文:
人種についての偏見やおもいこみは、だれにでもあるものです。そのことを、やとっているみんなに、まなんでもらうことにしました。研修ために、29日、アメリカの8000以上の店を、4時間にわたってしめました。およそ17万5000人が研修をうけました。
29+32+39+21字, AEAA.

短文の連続でかくことのむずかしさ

 論文「やさしい日本語ニュースの制作支援システム」には、ふつうのニュースと、やさしい日本語のニュースの平均文長の変化がしめされている(下図)。

「やさしい日本語ニュースの制作支援システム」, p111より。「やさしい日本語ニュースの制作支援システム」, p111より。

 ふつうのニュースの平均文長は、2012年からずっと、だいたい60字から70字のあいだにある。長文がでてくる頻度がたかいことがわかる。作文の勉強では、「記事は手本にならない」(『おとなの作文教室』, p180)と、外岡秀俊さんはかかれている。
 「やさしい日本語」のニュースでは、2012年から2013年にかけて、平均文長が、40字をこえるところから、40字をきるところまで、改善されたことがわかる。
 平均文長でみれば、「やさしい日本語で書いたニュース」は、梅棹忠夫さんの文章に匹敵したといってよいだろう(*)。また、このような傾向は「個人によらず同じ程度あった」ことが報告されている。
 みじかい文をつないでかく。そう意識してかきつづけていれば、数年で、だれでもうまくできるようになる。論文はそう示唆している。けっして、ぜったいにまねできないようなものではないとおもう。

*: いまの「やさしい日本語」は、梅棹さんよりも、ややおおく漢字をつかっている。そのため、おなじ文章でも、梅棹さんの表記法でかくと、文字数はおおくなりやすい。

まとめ

 達意の文章を作文をするとき、どうして短文でかけ、といわれるのか。今回とりあげた「やさしい日本語で書いたニュース」のなかの16個の長文からも、すこしみえてきたものがある。まずい長文の特徴は、つぎのようなものだろう。

 いちばんよくないのは、長文なのに、つたえるべき内容がけっきょくかかれていない。そんな長文だろう。
 梅棹忠夫さんは、むずかしく、かざった文をみると、「自分でなんのことかわかってんのか。それで納得いってるのか、とおもう」(『梅棹忠夫 語る』, p45)とのべている。まずい長文ほど、どうも短文になおしにくいのではないか。そんな印象ものこった。
 みじかい文をつないでかく。これは、どうやら練習をすれば、だれでもできるようになりそうだ。数年かかるかも、とおもうと、たいへんだけれども。