Shiki’s Weblog

新キーボード プロジェクト? - 評価

2013/10/15 #新キーボードプロジェクト

今回は、前回に引き続き新キーボードのキーピッチ18.8mm版(L)と17mm版(M)がまとまってきたので、そのお披露目と評価です。内容はGoogle+に書き込んでいたものを整理したものです。

18.8mm版(L)

18.8mm版18.8mm版

全幅はA4サイズよりも若干大きい315mm。フルピッチのふつうサイズのキーボードで問題なくキーに指が届く人にはもともとエルゴノミック キーボードの利点を訴求しにくいという課題がありますが、これくらいやるとゲーミング キーボードにどうでしょう(笑)?ハウジングはシボレー・コルベット3代目 C3型のボンネットまわり風にするとよく合うと思います。とは言っても、キーの物理的な配置は真面目にしているので、意外と手の小さめの人にも合います。

17mm版(M)

17mm版17mm版

今回の本命はこちらのキーピッチ17mm版です。 前回の 今風に作るとしたら…』ということで描いたイメージ図 に合わせて、エルゴノミック キーボードにありがちな「何だこりゃ?」感をなるべく抑えてみました。各キーの傾斜は18.8mm版と共通になっています。全幅は288mmとA4サイズに収まる大きさです。一般的なフルピッチのキーボードの全幅18.8*15=282mmとほとんど同じなので、11インチクラスのノートパソコンから合わせられそうなサイズになっています。キーピッチを小さくするとデザインの自由度はあがる一方、あんまり指が窮屈にならないように気をつけないといけないのが難しいところです。この17mm版は、同じ指用のキーピッチは17mmですが、異なる指間では一番狭いX - C間で18mmあるので、手の小さい人から平均的な大きさの手の人まで使えるサイズだと思います。

評価

今回は試作前に17mm版を既存のキーボードと比較してみたいと思います。比較対象は、オリジナルのTRONキーボードMicrosoft Sculpt Ergonomicキーボード、μTRONキーボードの3種類です。(以下、比較写真の17mm版は上図の現行案より1つ前のバージョンになっています。)

TRONキーボードとの比較

キーピッチ16mmのTRONキーボード[1]の比較してみます。

TRONキーボードとの比較TRONキーボードとの比較

まずは、親指、中指、薬指、カーソルについてはほぼ完全に重なります。基本的にTRONキーボードに小指の部分以外まったく不満がなかったのがうなずける結果と言えそうです。(今回TRONキーボードの寸法を計測してこうしたのではなくて、18.8mm版で最適化した角度をそのまま17mmにもってきたらこうなった、というのが興味深いところです。) 人差し指については新キーボードはTRONキーボードよりさらに傾斜がかかっているので完全には重なりません。ただ面白いのは、TRONキーボードのKとXキー(TRONはDvorakが標準)は重なっているというところ。TRONキーボードで一見無駄にJとKキーの間にスペースがあるように見えるのは、中指と人差し指がそこで窮屈にならないように配慮していたからだ、ということが分かります。逆に新キーボードの4と5キーは半ピッチずらしたほうが小さめの手の人には優しくなりそうです。中央上段のTRONキーボードの×キー(Tabキーの上側)はちょっと指が届きにくい位置にある。比較的初期のTRONキーボードだとこのキーが×キーではなくてTabキーだった時期があります。ひと呼吸おくキーと見るか、打ちやすくあるべきキーと見るか、みたいなちょっとした考え方の違いがありそうに思います。TRONキーボードの小指部分、僕が前回指が届きにくいと書いていた上段2つのキーは16mmピッチではぎりぎりの位置から若干はみ出していることがわかります(新キーボードは最初は外側は1キーのみにしていたのを2キーにしているので、これで結構ギリギリだという点に注意。僕の手の場合だとTRONキーボードは15mmピッチにしないと小指がつらい理由はここだったわけです)。それから新キーボードで新設した最下段端のCtrlキーとTRONキーボードの命令キーは割と似た位置づけのキーだということがわかります。このキーは小指ではなくて手のひらでポンと押すようにするとスムーズに使えます。(新キーボードは2キー実は多いのでこのキーはなくてもという説もあります。) というわけで、新キーボードはTRONキーボードよりも1mm広いキーピッチで同じ指の可動範囲の中に同数のキーをまとめられていることがわかりました。TRONキーボードは小指に多少負担がかかることをたぶん承知の上でどうして1のキーをQWERTYキーボードのQの位置へ持ってきたんだろう?というのがすこし不思議な感じがしますね。

Microsoft Sculpt Ergonomic キーボードとの比較

Microsoft Sculpt Ergonomic キーボードと比較してみます。

Microsoft Sculpt Ergonomic キーボードとの比較Microsoft Sculpt Ergonomic キーボードとの比較

フルピッチだと、「6まで人差し指が届かないです」とか、「1を小指でとかムリ」、みたいな人が多いのがよくわかるんじゃないかと思います。とは言えSculpt Ergonomicキーボードのキーの並ぶ曲線の描き方はなかなか綺麗です。大きめの手のひとにはまったく問題ない空間的な設計になっていると思います。それから新キーボードのカーソルとか親指キーとかが実はそんなにスペースをとっているわけではないこともわかるかと思います。パームレストにも写真右下の Altキー以外はあたりません(デザイン的なことがなければ、実際にはAltキー下にまでパームレストはいらないですね)。立体的な形状はSculpt Ergonomicキーボードは本当によく出来ているので、そのまま新キーボード版を作ってほしいくらいです(笑)。

μTRONキーボードとの比較

長方形のキーボードとの比較はあまり意味がないのですが参考までに、同じキーピッチ17mmのμTRONキーボード[2]と比較してみます。

μTRONキーボードとの比較μTRONキーボードとの比較

単にキーピッチを19mmから17mmに小さくする、というだけでは、オリジナルのTRONキーボードが解決したような1や6に指が届くキーボードにはならないことがわかります。1や6キーのカバー率はキーピッチ19mmのMicrosoft Sculpt Ergonomicキーボードの方がむしろ少し優れていそうです。キーピッチよりもキーの物理的な配置を見なおした方が人の手には優しいということが言えそうです。なおμTRONキーボードは『コンパクトにして持ち運べるように』[3]という狙いがあったようなので、こういう長方形の配置を選択したのではないかな、と思います。Microsoft Sculpt Ergonomicキーボードはエルゴノミック キーボードの中では小さい方ですが、持ち運ぶにはちょっと大きいかもしれないですね。でもμTRONキーボード、縦に1段分大きくなってもいいからもっとオリジナルのTRONキーボードに近いものにしてほしかったな、と思うのでありました(笑)。

微調整

以上の評価から、新キーボードは数字の4, 5キーの位置がまだ指が届きにくい人がいる可能性がありそうなことがわかりました。また、カーソルキーの横のキーピッチが17mmだとやや指が窮屈で、ゲームのようなずっとカーソルキーに指を置いたままの使い方には不向きです。そこでこの2点を調整したものが最初に紹介した17mmの現行版になります。現行版とTRONキーボードとを比較したのが下図です。4, 5キーについてより良好に指の可動範囲をカバーできていることがわかります。またカーソルキーについては、横のキーピッチを19mmに拡げてあります。

17mm現行版とTRONキーボードの比較17mm現行版とTRONキーボードの比較

キーアサイン

今回キー数は101キーボードにWindowsキー2個とメニューキーを追加した104キーボードを念頭にしています。WindowsキーはUbuntuとかを使っている時も実は便利だったりしますね(個人的にはWindows 8よりもうまく使っていると思うくらいです)。テンキー、ファンクションキー、PrtScn, ScrLk, Pauseはどこでも好きなところに置いて下さい。ただテンキーはともかく他は取られると困ります。QWERTYの場合、キーアサインの1案としては以下のような案が考えられます。`, [, ], \の4キーをどうするかが悩むところです。

キーアサイン案(QWERTY)キーアサイン案(QWERTY)

TRON配列の場合はそのまま使ってください!TRONキーボードとキー数を同一にするために当初案より実はキーを2つ増やしてあります(Ins, Delはなかったのでした)。指を広い範囲に動かさずにカナを直接1文字ずつ入力できるのは意外と気持ちがいいものですよ(ただし、親指のShiftキーは必須)。余談:  JIS配列は僕が日頃一切使っていないのでよくわかりませんが、増えた[ム]と[ロ]は[Ins], [Del]の部分を使うといいと思います。変換、無変換、ひらがな、については「漢字変換なんて変換キーじゃなくって、スペース・キーでいいじゃん」という意見が昔からありますけれど、どうでしょうね。

まとめ

というわけで連休中の息抜きの筈が思った以上にはまってしまったのでした。本当はひとつ試作してみたいのだけれど、それよりもキーボード メーカーさんに安く大量に作ってもらえるのが一番ですよね。どうでしょうか? 参考文献 [1] TRONキーボード・トレーナー, TRONWARE VOL.8, パーソナルメディア, 1991. [2] http://www.personal-media.co.jp/utronkb/keylayout.html [3] TRONキーボード再び, 坂村健, TRONWARE Vol. 100, パーソナルメディア, p.128, 2006.