Shiki’s Weblog
新しいウェブ ブラウザ "escort" を公開しました
2012/07/01 #ESウェブブラウザ通信
今日でエスリルも2周年を迎えることができました。2周年記念ということで、本日エスリルで開発を進めてきた escortウェブ ブラウザ (Alpha版)のパッケージを公開しました。
escort 0.2.0 (alpha)
escortウェブ ブラウザは、昨年からESウェブ ブラウザとしてオープンソースプロジェクトとして開発を進めてきた新しいウェブ ブラウザです。HTML/CSSレンダリング エンジンは完全に新規開発のものになります。またescortウェブ ブラウザでは、ユーザーインターフェイス(UI)自体もHTML/CSSとJavaScriptで作られています。今回リリースしたものはアルファ版ですので、開発者の方からフィードバックを送って頂いたり、実際に開発に参加していただいたりするきっかけになればと思っています。なお日常的に利用できるような段階にはまだなっていませんのでご注意ください。
インストール方法
escortウェブ ブラウザの現在動作確認済みの環境は、Fedora 17とUbuntu 12.04 LTSです。Fedora 17についてはRPMパッケージを用意しています。escort-0.2.0-1.fc17.i686.rpm(32ビット)もしくはescort-0.2.0-1.fc17.x86_64.rpm(64ビット)をダウンロードできたら、ターミナルから、
# 32ビットの場合
% sudo yum localinstall escort-0.2.0-1.fc17.i686.rpm
# 64ビットの場合
% sudo yum localinstall escort-0.2.0-1.fc17.x86_64.rpm
のようにしてインストールできます。(Fedora 17以外の環境については、ソースコードからビルドしてください。)
起動方法
最近はいろいろな GUI シェルが開発されているので、念のため主要なシェルでの escort ブラウザの起動方法をまとめておきます。
KDE
画面左下の Kickoff アプリケーションランチャー(Fedoraの場合はブルーのfedora ∞アイコン)をクリックしてから、 Applications - Internet と選択して、 Web Broser / Escort を選択します。
KDE から起動
GNOME Shell
Activities - Applications をクリックして、 Escort アイコンをクリックします。
GNOME Shell から起動
Ubuntu Unity
Dash home をクリックして Search テキストボックスに、escort と入力していくと、ESロゴアイコンが表示されるので、それをクリックします。
Ubuntu Unity から起動
ターミナル
ターミナルからは escort で起動できます。% escort
操作方法
起動直後は about:blank ページが開きます。
about:blank
ウィンドウ下側にツールバーがあります。
ツールバー
左からESロゴボタン、戻るボタン、進むボタン、アドレスバー、再読み込みボタン、中止ボタンになります。ESロゴボタンを押すと、(いまのところは)about: ページが表示されます。
about:
about: ページで上から4行目、Copyright 2012 Esrille Inc. となっている青色のリンクをクリックすると、エスリルのページが表示されます。ロード中はツールバーのESロゴボタンの部分が歯車のアニメーション表示に変わります。
ロード中のツールバー
ロードが終わると、ESロゴの表示に戻ります。
http://www.esrille.com/
このときウィンドウのタイトルバーには表示しているページのタイトルとファビコン(もしあれば)が表示されます。
タイトルバー
続いて、ツールバーの中のアドレスバーをクリックして、 http://www.webstandards.org/files/acid2/test.html とAcid2テストページのURLを入力してみます。
Acid2テストのURLを入力
入力できたら[Enter]キーを押すと、ページの読み込みが始まります。(ちなみに、アドレスバーのテキストボックスも今のところはXBL2を使ってHTML/CSSとJavaScriptだけで実装されています。)
http://www.webstandards.org/files/acid2/test.html
ウィンドウ内の Take The Acid2 Test というリンクをクリックすると、Acid2テストの結果が表示されます。
Acid2 テスト結果
現状CSS 2.1については比較的対応が進んでAcid2テストに合格するほか、CSS2.1 Conformance Test Suiteも約90%のテストにパスするようになっています。一方、JavaScriptをふんだんに使った最近のリッチなページやAcid3テストヘの対応はまだこれから、という段階です。
ファイル構成
escort ウェブ ブラウザをインストール後のファイル構成は以下のようになっています:
/usr/bin
+ escort # ブラウザ コアを呼び出すシェルスクリプト
/usr/libexec/esrille/escort
+ escort # ブラウザ コア(バイナリ実行可能ファイル)
/usr/share/applications
+ escort.desktop # freedesktop.org対応のデスクトップファイル
/usr/share/esrille/escort
+ escort.html # HTMLで記述したブラウザUIページ
+ default.css # デフォルト スタイルシート
+ escort.ico # デフォルトのウィンドウのアイコン
+ etc. # その他escortが使用する画像ファイル等
/usr/share/esrille/escort/about
+ blank # about:blank ページ
+ index.html # about: ページ
+ etc. # その他about URLが使用する画像ファイル等
/usr/share/icons/hicolor/*x*/apps
+ escort.png # GUIシェルから参照されるアイコン
のようになります。また、ユーザーの設定ファイルなどは、
$HOME/.esrille/escort
を参照します。ブラウザがファイルを生成する場合もこのディレクトリの中に生成しています。現状ではこれらをひとつのパッケージとして配布していますが、実際にはブラウザ コア (/usr/libexec/esrille/escort/escort)の部分を再利用して、いろいろな GUI アプリケーションを HTML/CSS と JavaScript だけで作ることができるように開発を進めています。(そういったお話はまたESウェブブラウザ通信で別の機会に。)
まとめ
今回は新しい escort ウェブ ブラウザの紹介をさせていただきました。エスリルでは引き続き escort ウェブ ブラウザの開発をオープンソースで進めていきます。エスリルも3年目になりましたが、エスリル カフェともども、これからもよろしくお願いいたします。
追記 (2012/7/2)
User-Agent文字列
escort ウェブ ブラウザのUser-Agent文字列の形式は、
Escort/x.y.z
となっています。x.y.z
の部分はパッケージのバージョン番号("0.2.0"など)です。
JavaScript エンジン
escort ウェブ ブラウザは Web IDL のC++11バインディングを経由して、現在のところSpiderMonkeyかV8を JavaScript エンジンとして利用することができます。なおバージョン 0.2.0のRPMパッケージにはSpiderMonkey を利用するバージョンが含まれています。